伴侶の有難み

 私は60歳を境に、国内部門の会社の代表権を返上し、長男を代表取締役にしました。

輸入部門に関しても、私の右腕が代表取締役でしたが、辞職したいとの要望で、次男を代表取締役に据えました。

 その時から、10年かけて事業承継を完了させ、自分一人の法人を立ち上げることを決めたのです。

その10年で私が作った借金はほとんど完済になるように組んでもいました。

取引先の銀行からも、息子達の成長のためには、倒産を覚悟しながらも、頭ごなしの意見を言うべきではないとアドバイスされたものです。

 店に行くと、何かと小言を言いたくなるので、極力店へは行かないように努めました。

真ダムは、経理やプライベートでほとんど毎日外出していました。

必然的に、自宅に一人いる時間が増えました。

 時間が勿体ないと、本を読んだり、投資の勉強を続けましたが、ある時にふと気づくことがありました。

それは、昼食や夕食などが食べられないことです。

今まで家事全般を一切やってこなかったことの現実を、突き付けられたのです。

それからは、家事に経理に奮闘している真ダムの凄さを感じだしました。

今まで名前を呼び捨てにしていたのを、「○○さん」と丁寧にいうことに決めました。

 先日、ほとんど病気もしたことがない真ダムが、急に体調を崩しました。

咳と鼻水が出て、微熱があり、終日ベッドにもぐりこんでいました。

私自身は何も食べなくても平気なのですが、彼女にどういう対応をしていいか分からなかったのです。

 先ず、午前中にはイチゴを洗って緑のへたを取り、5粒を皿に盛り、栄養ドリンクと一緒に2階の寝室へ運びました。

食欲は無かったようですが、イチゴは完食し、栄養ドリンクも飲み干しました。

 午後になっても熱が下がっていなかったので、富士薬品の置き薬の感冒薬を飲ませ、ダンロップの氷枕に冷蔵庫の氷を詰め込んで、タオルを巻いて頭の下に敷きました。

 夕方には、枕の氷水を換え、冷蔵庫にあったヨーグルトに蜂蜜をかけて食べさせ、アクエリアスを飲ませました。

そして、近くのセブンイレブンまで徒歩で行き、小さな海苔弁当、若鳥のチキン南蛮弁当、シジミ汁、なめこ汁、サンドウィッチを購入したら2036円。

普段家庭内の食費は真ダム持ちなので、価格を把握していませんでしたが、コンビニ弁当類も意外に高いと知りました。

その割には、あまり美味しくありませんでした。

日曜日だったので、近くの病院へも連れて行けません。

残念ながら、私が出来たことはこれだけでした。

かなり自分の無力を感じました。

 真ダムに「頼むから早く良くなってくれ」と私。

「私に何かあっても、お金があれば若い女性を雇えるよ。その人に食事とか作ってもらえば」と真ダム。

私は一人では暮らせないことは理解しているので、そのようなこともあり得ないことではありません。

しかし、直ぐに思いつくのが「紀州のドンファン事件」です。

今更若さや美貌の女性は必要ではないのです。

 何も気にすることなく、空気のように、当たり前に存在する伴侶が欲しいのです。

私よりも一日でも長生きして欲しいと思った一日でした。

 

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