遠い記憶(3)
「活眼をもって生きた本を読め(動きの激しい時代では、事業家は法律知識と税務知識の概要を知っておかねばならない。細かな点では専門家を活用することだ。本を読むばかりが能ではない。俺のように失敗を重ねて成功した人の話を聞け。これを耳学問という)」
「一日主義(今日のことは今日、全力を挙げてやり通す。不幸というのは幸福の源泉。不幸は幸福の前兆だと思って、全て明るい気持ちで仕事に取り掛かるべきだ。必ず道は開ける。難問題が起きたら、慌てないこと、くよくよしないこと、これはいい勉強だと思うこと。これを転機に俺の人生はいい方向へ向かうのだと思って、毎日毎日を努力すること)」
「悟りは禅寺よりも監房で(何度もブタバコに入れられた。好きな酒も女も断たれ考えたことは、死ぬときの決算で帳尻がプラスになるにはこれからどう生きるか。人間の命は短い。しかし事業は永遠だ。その事業を生かすためには『徳』をもって治めるべきと悟った)」
「ゴマすり管理職鑑別法(いろんな大事件や非常事態が発生した時の言動をよく観察しろ。人間の素が出る。辞めるというものは辞めさせろ、決して止めたりするな。天からの恵みだ。人減らしの、人を取り替えるいい機会を与えられたと思い感謝して、さっさと辞めさせてしまえ)」
「ツキと時に乗じて勝て(勝負事をやったものなら分かるが『ツキ』というものがある。ツイている時はそのツキを利用してどんどん事業を進めるべきだ。ツイていない時はじっと『時』がくるまで待つことだ)』
「成功者は貧民窟から生まれる(世間からの蔑視と屈辱に耐えて、なにくそっという不屈の闘争心が養われ、それが成功への原動力となっていく。幼児期の人格形成期間は最も大切だ。そのためには『可愛い子には旅をさせろ』だ)」
「転進する時は、充分な準備をしてかかれ(お金を貯めて始めた米屋は確かに堅い商売である。しかし朝から晩まで身を粉にして働いてもたかが知れている。そこで目を付けたのが交通事業である。設備投資に莫大なお金が必要で当時は増資の連発。米屋の利益を全て福島交通の株式購入にあて、気づいたら大株主になってその会社の重役になった)」
「まず相手に利益を与えよ(甲と乙で戦争が始まりそうだった。その頃の最高の武器は『馬』だった。甲は死んだ馬まで買い取る政策をしたので、生きた馬ならもっと高く売れるとの思惑から、みんながせっせと馬を飼育した。一方乙の国は馬を強制的に安くで摂取した。馬を持っている人々は馬を野に放ち、飼育する人も誰もいなくなった。結局甲が戦に勝った。働く人々に生産意欲を与えたから勝ったのだ)」
「他人の力で切り開け(石橋をたたいて渡る堅実さは必要だが、ものにはチャンスがある。その時に金が足りないと見送るのは事業家としては大成しない。力がない時期にはお金があるやつの力を借りるのだ。妾が旦那に見捨てられないようにするには、立派な家を造ってもらい、毎月の仕送りを大きくしてもらうこと。大きなお金を使ってしまうと旦那はそのお金が惜しくて、妾を捨てることが出来ない)」
「貧乏性こそ美徳だ(昔の苦労を忘れないために、社長の今でもにぎりめし持参で会社に来る。上がこのように、質素倹約を旨としておれば、下も必ずそれに習うものだ。勿体ないという気持ちが深く身に沁みついている)」
「女房を押さえつけておけ(女房の尻に敷かれていると言われる人物に大成する人はいない。家庭を顧みるなというのではない、女房を蔑ろにして良いということでもない。事業家は、ある時期、その暇もなく働かなければならない時があるということを、普段から女房に理解させておけ)」
「ワンマンこそ責任を果たす(何か事件が起こるとサラリーマン社長は辞表を提出する。事業家はそんなに甘いものではない。責任は取るものではなく果たすもの。民主主義の美名のもと、多数決のまあまあ経営では、今日のような激動の戦国時代は乗り切れない。精密数字をはじき出してデータだけで経営出来るなら経営者はいらない。事業家はもっとワンマンに返れ。強靭な精神力と勇気がなければ、最終の責任は果たせない)」
最終回
