穏やかな昼下がり
久し振りに両親が、午前中から我が家に来ました。
私が何時ものルーティンで、起床後窓を開け
朝刊2紙を丹念に読み終え、経済誌を中頃まで読み進んだ時に
道路から父の声が聞こえてきました。
まだ長期入院後退院してから完全復活していない母を気遣い、
声を掛けながらホームから400M離れている我が家まで
自力で歩いて来させたようです。
「ずっとホームばかりで少し飽きた」と言って
昼御飯用の牛乳やアンパン・メロンパンが入った
ビニール袋を下げてやって来たのです。
その日は幸い曇り空で、暑くも寒くもなく
たまにそよぐ風がとても心地よいものでした。
到着後、暫くして父は地下足袋に履き替え
門から玄関まで続く耐火煉瓦のアプローチの隙間に生える
草を取りにかかりました。
母は、いつものようにダイニングの床から20㎝ほどあげて造った
琉球畳のコーナーに腰かけ
ぼろきれをはさみで切り、工場用のウェスを作りはじめました。
私は読みかけの経済誌を読了し、証券会社に電話を入れ
外部からの10本ほどの電話に対応し
数年に亘り活動してくれていますが未だに実績が無い
不動産会社の営業マンと打ち合わせ。
そうこうするうちに、12時を回り庭から引き上げてきた父が母と
仲睦まじく持参したパンと牛乳を頬張る姿を見た時に
ゆったりとしたこの時間が悠久であれと思いました。
西側に植えた、今を盛りとばかりに黄金色に咲き誇る
金木犀の花の香りが、穏やかな昼下がりに妙に合っていました。