どのような評価がくだるか
西南学院大学公開講座「小説を書くための読書」の第一回が終了し、宿題が出ました。
何でもよいので好きな本を読んで、800~1200字程度で書評を提出というもの。
提出期限は10月16日(金)
WORDもしくはテキストデータで事務局あてに送らなければなりません。
先ずWORDとかテキストデータとか、それらをメールで送るなど、アナログしか知らない私にとっては、方法が全然分かりません。
すぐに長男を呼んで教えてもらいました。
言われた通りに書評を添付してメールで送信しましたが、メールソフトに「送信済み」の項目がなく、本当に相手に届いているのか心配でなりません。
どのような本を読み、どのような書評を書いたか、WORDを右クリックしコピーなるものをして、この場所に貼り付けてみました。
救われた母性
先ず、着想に驚きました。
母親がわが幼子を殺すような事件は、最近たまに各種報道で知ることが出来ます。
しかしその行動は、計画的であれ衝動的であれ、他人が見ていないところで行うものだと、私もほとんどの人も想像するからです。
大勢の人々が行きかう新宿の自由通路のそれも真ん中で、我が子を地面に置き、幼子の首を絞めながら、「死ね、死ね」と繰り返しているのです。
この様な発想が自然に出たのか、ひねり出したのかは不明ですが、作者に非凡なものを感じます。
次に、展開の速さとリズムが実に丁度いい。
速過ぎず、遅過ぎず、淡々と大きなブレの無いリズム感が、読み手の気持ちをリラックスさせ、サビはどのへんかと興味をそそります。
サビに向かって次第に高揚させるためのヒントが、少しずつちりばめられていきます。
出だしから東京の夏の暑さを克明に描き、最近では老若男女が知っていて、常に死人まで出る「熱中症」に焦点がいきます。
大都会の他人には無関心な様子も、また人の不幸をチャンスと考えるような風潮も、僅かの語句と文章で表している筆致も小気味よい。
救急車で運ばれる幼子の描写のシーンは、恐らく詳細な医学知識を得たのでしょう。
それに、次の救急患者の受け入れをベッドに空きがなく断るシーンを入れたことで、より現実味を増しています。
家宅捜索の西日が当たるアパートの部屋のシーンと、区役所の生活保護申請の担当者とのやり取りのシーン描写は秀逸でした。
まあ、よくある推理小説の場面に似てはいますが、この部分が無いと『サビ』へとは持って行けません。
いよいよ『サビ』の部分になります。
担当刑事の渡部が、刑事課長に捜査結果を報告する場面です。
刑事課長は話を聞いたのちに、検察官への送致を指示します。
被疑者が自分の幼子の首を絞めて殺そうとしたことを認めている以上、殺人未遂の疑いで当然の結果のように思えます。
ここで、組織の暗黙のルールを認識している渡部は、面と向かってではなく、静かに送致の再考を求めます。
仕事もお金もなく、栄養失調と熱中症に罹ったと思われる幼子を救うための母親の止むに止まれぬが計画性も有する行動と推測した理由を述べます。
自分が逮捕されている間は、幼児はクーラーの効いた病院で治療を受けることが出来、食べ物も与えられる。
治癒した場合も自分が留置されている間は、少なくとも公的機関で保護される。
生きていけるのです。
う~ん、と唸りました。
我々が凡事と思うようなことでも、ここまでのストーリーの広がりを持たせることが出来る著者に脱帽です。
「無明 米澤穂信 著」新潮文庫
感想は『京佳秀峰(ペンネーム)』でした。
因みに『無明』とは仏教用語で、(最も根本的な煩悩で、生老病死などの一切の苦をもたらす根源)
