続続まな板の鯉(恋)
1回目の手術が終わった三日後から出血が始まりました。
それもかなりの量でした。
すぐにK病院に電話を入れ、緊急で主治医に見てもらうことに。
「1本糸が切れているし、傷口が開いています。
もう一度縫い直します。」と、
今度は、番手の太い糸で施術。
「これで出血が止まらなければ、大きく深く切って
それなりの処置をしなければなりません。」
そこで私は、かなり不安になり、不信感も合わさって
「最初、簡単に済むような回答でした。次の大掛かりな手術で
出血は本当に止まるのですか?」
すると彼は、私の目をきっと見据え、
「私は、癌患者で舌を半分に切ったり、もっとひどい出血の人を何人も
手術しています。必ず出血を止めて、なるだけ元の生活ができるようにします。」
気圧された私は、止血用の特殊なガーゼを何枚ももらい
仕方なく、二回目の手術で何とか全てが終わることを祈りながら
手術室を後にしました。
ところが、日を追って回復するはずのものが
一向に良くなりません。
ついには、夜中に出血で息苦しくなり目が覚めるようになりました。
どうしようもなく、私は観念して9月16日に
大がかりの三回目の手術を受けることになりました。
今までと違うところは、舌に打つ麻酔の注射が2か所から5か所に増えたこと。
普通のメスに電気メスが加わったこと。
電気メスは小さな毛細血管を焼いて出血を止めるようです。
皮膚を焼く何とも言えない匂いだけが鼻に残りました。
そして、くだんの女医のほかに、もう一人の男性医師が加わったことです。
当然施術に要した時間は、今までの倍以上です。
術後も痛いし、流石の痛みには強いと自負がある私も
麻酔が切れてからは痛み止め薬なしでは、数分も我慢できませんでした。
それからは、全て筆談にし、流動食を恐る恐る流し込む日々。
ベッドに横になって眠ると舌を奥の方に動かすということで
4日間、椅子に腰かけて眠りました。
家族の助けで、昨日、ようやく無事に抜糸が出来ました。
「まだ傷口が完全には塞がっていません。
自然と下の方から盛り上がってきます。
食事は、用心しながら流動食から普通食に戻してください。
運動は普通通り行っても良いです。
会話は控えめだったら良いでしょう。
10月7日にまた来てください。それまでに出血や痛みがなければ
それで完全に終了です。」
手術室の外にある長椅子で、まだ不安は拭いきれずに
予約時間の確認を待っていました。
すると今度は赤みがかった、いかにも知的に見えるメガネをかけて
彼女が「大丈夫ですよ。医長の腕は確かですから。来月で終わりですね。」
ニコッと微笑みかけながら「私は、来月から耳鼻咽喉科に移ります。」