違った風景
今まで午前5時半前後に起床していましたが、最近は1時間ずらして午前6時半前後に敢えてしています。
睡眠や健康に関する新聞記事等を読むと、日本人の睡眠時間は世界的に見ても短いそうです。
70代の理想の睡眠時間が7時間前後とあったので、それに合わせるようにしました。
たまに午前3時ころ目が覚めても今までは、我慢しながら読書をしたりして午前6時から歩いていました。
これを1時間ずらすだけで、精神的に余裕ができたせいか、午前3時前後に一度目が覚めても再度眠りにつくことができ、起きるのがだいたい午前6時半ころになるのです。
トレーニングのルーティンは変わりませんが、見える風景が一変しました。
当然なのですが、公園で出会う人々の顔ぶれが全然違うのです。
大抵は老齢の方々ばかりですが、先日は興味深い、親子と思われる大人と子供に遭遇。
1週450mの池を囲む散歩道を速や足で歩いていると、周囲が大木で囲まれているせいか、幅70~80mの対岸の声がよく響きこちらまで聞こえてきます。
父親と思われる男性は30代後半、娘は身長からして小学2~3年生(孫にバーゲンで洋服を買い与えるので見当がつきます)。
「上段の突きからの蹴りが遅い。何度言ったらわかるんだ。だから負けるんだ」
私も高校時代に空手道場に通っていたので分かりますが、どうも空手道とは違います。
手に薄めのグローブをはめ、足をこまめに動かしながら、突きと蹴りを交互に繰り出しているのです。
しばらく歩き、声が聞こえる対岸まで来ました。
「そんなんで全国が狙えるか。泣くな!!」
そのたびに娘と思われる華奢な女の子が、「はい」「はい」と返事をしています。
私が3週目にかかったころ、「真剣にやれ!返事が小さい!」。
すると娘が泣き声を押し殺しながら大きな声で「はい」と繰り返すのです。
思わず、自分の過去を思い出しました。
ラグビーの練習で、特に長男には私も同じようなことをしていたのです。
それ以来、長男はラグビーが嫌いになりました。
この父親に言ってあげたくなりました。「指導方法を間違っていますよ」と。
4週を過ぎたころ、この二人が帰りだしたのですが、歩きながら父親が「もうお前には教えん、勝手にやれ」と。
4~5m後をうなだれながらついていく娘さんに、思わず「絶対に負けるな」と心の中で応援しました。
なんだか暗い気持ちになって階段を登り切った踊り場で、老夫婦と思われる男女とバッタリ。
初めて見る顔でした。階段を上下するときに思い切って手を交互に大きく振るのですが、それを見て男性が「元気がいいですね、理想の姿」と笑顔で声をかけてくれました。
奥様と思われる女性も笑顔で私を見ていました。
「有難うございます。カラ元気です」と言ってまた歩き出しました。
暗い気持ちから急に喜びへと変わりました。
「理想の姿」等の誉め言葉を、正面切って目を見ながら言われたことがあるだろうかと、歩きながら記憶をたどりました。
そこで淡い記憶を呼び起こしました。
私が若かりし頃、取引先の女性が会社を辞めるというので、今までのお礼に食事をご馳走したのです。
食事が終了間際の彼女の言葉は今でも忘れません。
「〇〇さんは私のタイプでした。店に来られた時にいつももう少しお話をしたい思いながらも、すぐに帰られるので心苦しかった」と。
TVのコマーシャルではありませんが、「もっと早く言ってよ!?」
その後すぐに彼女は結婚して、東京へと引っ越しました。
「理想の姿」と「私のタイプ」という、今までの人生で二つだけの面と向かった誉め言葉に気をよくして、スクワット、踵上げ、一本足立ち、腕立て伏せをこなしたころには、充実感でいっぱいになりました。
