優しくも芯が残る

 2025年4月22日(火)11:58読了。

「藍を継ぐ海」伊与原 新 著。

第172回直木賞受賞作でした。

 今までの会社経営や、現在の株式投資・不動産投資は、「勝たなきゃ意味がない」世界です。

ある意味、生き馬の目を抜く覚悟が必要なのです。

倒産したり、投資で大損したりしても、誰も同情すらしてくれません。

負け犬として、社会の片隅に放り出されるだけです。

 そのような環境で生きていると、自然と心がささくれ立って来ます。

倒産した奴が悪い、大損した奴が悪い、と冷徹にどこか他人事にして、次の展開を急いでいる自分がいます。

不思議なものです。そのような自分を自覚している時にこの本に出合いました。

 普通なら、経済誌等の雑誌や本、新聞等で書評を読んでから購入します。

この本はたまたま、何時も購入する小田部の積文館書店で何気に手に取ったものでした。

 唸るほどの表現力は感じませんでしたが、緻密な資料収集や何度も現場に赴いた跡が見て取れて、ノンフィクションに近い緊張感も感じました。

ノンフィクション特有の几帳面の固さがありながら、読後感は涼風を感じながら海辺で夕陽を見ている感覚に囚われました。

 5編の短編集なのですが、特に気にいったのが「祈りの破片」と「夢化けの島」でした。

そして最後にこの本のタイトルである「藍を継ぐ海」を読む構成になっていて、自然と心が凪となるようにできています。

 神様が、少し休みなさいと言っているのかもしれません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

未分類

前の記事

奥が深い
未分類

次の記事

名を捨てて実を取る