認知行動学
「何回説明しても伝わらないはなぜ起こるのか? 今井むつみ 著」を2024年11月11日午前9時41分に読了。
「これは間違いない事実だと確信していることですら、実は非常にあやふやなもの」といった文章に思わず引き込まれました。
サラリーマン時代から、独立して経営者になった時代にも、この本が世に出ていたら、私ももう少しは成長したかもしれません。
今年久し振りの、経営者や店長には必読の書だと思います。
コミニケーションでいえば、「間違いなく伝えた」「分かってもらえたはず」というのは思い込みに過ぎない。
何と刺激的な文章であるにも拘わらず、よく体験したことでもあります。
また、視界には確実に入っているのに、見えていないということは、珍しいことではないとのこと。
様々な情報の中から自分に都合のいいものだけを無意識にピックアップして、それが全てだと思い込んでしまうそうです。
コミニケーションの前提として大事なことは、先ず、誰もが、自分とは違う方向に偏った知識や関心、専門性を持っていることを自覚する。
次に、記憶というものは元来非常に脆弱だという認識を持つこと。
つまり、仕事のできる人は、「相手も自分も忘れる可能性がある」ということが分かっています。
そして、それを回避する方法をあらかじめ見つけておく人なのです。
さらに大切なことは、相手の話を聞くこと。
これが私の最も不得意なことなので、今まで相当の損が生じているはずです。
「話を聞くぞ」と意識して一生懸命に聞かねばならないそうですが、そう思ってもついつい自分の意見を言ってしまいます。
ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンによると、私達の意思決定は、大半を「直感」で行っているとのこと。
そしてその「直感」は人間にとって効率がいいだけでなく、おおむね正しいそうです。
この点は、私も同感です。
このブログでも何度も『勘』『第六感』の重要性を記述してきました。
認知心理学や脳神経科学のデータでは、選択や意思決定の多くの場合、人は最初に感情で「好きか嫌いか」で物事を判断し、その後に「論理的な理由」を後付けしていることを示しているそうです。
この点も納得です。
特に経営において「合理的に判断できるだけのデータが集まるまで判断できない」というのは、究極の非合理という意見には、思わず膝を打ちました。
また、「教えられて学ぶ」よりも、「技を盗む」「見て学ぶ」ことの方が身に付くそうです。
それを磨くためには、自分で分析し仮説を立てて検証する事という解説を読んだ時には、私の今までの行動を評価された気になりました。
人間は、前提として分かり合えないものであるという認識が必要です。
「人は誰もが異なるフィルター、つまりスキーマ(人間が経験の積み重ねにより獲得する、外界の限られた情報から理解するための知識・思考・行動の枠組み)をもっており、それをベースにしてしかコミニケーションは取れないという事実を理解することが重要。
また、「達人の直感」を育てるのに必要なのは、長期間に及ぶ「真剣で工夫を凝らした訓練」で、目安は1万時間だそうです。
稲盛和夫氏も言っておられますが、強い思いを持ち続けられることは、それだけでも大きな能力だと思います。