午前様
広辞苑によると「午前様」とは、『酒を飲み、また遊び過して帰宅が深夜の零時過ぎになること』
熊本県から父親あてに来た大型封書を開けました。
今年の初めくらいまでは、封書等はそのまま父親に渡していたのですが、急激な認知症発生で最近では全ての封書を私が開封しているのです。
内容は父の第2の職場の退職者の情報誌でした。
中身を読んでいくと、最後の方に事務局長の名前と住所と携帯の電話番号が掲載されていました。
その名前に見覚えがあったのです。
まだ私が40代の頃、父から私と同級生の彼と同じ職場と聞かされていました。
早速高校の卒業アルバムと、高校のOB会の会員名簿を調べると、住所と名前が一致しました。
急に懐かしさが込み上げてきたのです。
彼とは1973年の卒業以来一度も会っていないし、電話やはがき等の連絡もしたことがありませんでした。
彼とは1年~2年まで同室(組)で、彼は私の憧れの『格好いいチョイ悪不良』だったのです。
背が高くてハンサムで、兎に角女子高生や女子大学生、看護婦等にもてていました。
私も彼も2年生の時に男子クラスになり、それは思春期真っ盛りの性欲塊の集団。
授業の合間の休憩時間ともなると、エロ本は飛び回るし、彼の周りに人が集まり女性体験の話を皆で目を丸くしながら聞いたものです。
少し躊躇はしたものの、思い切って彼の携帯に電話しました。
するとあの頃と変わらない彼の声。「うわーびっくりした、どがんしよっと?」
話の中でもう一人の級友の名前も出てきて、2か月後に3人で熊本で会食することになりました。
その会食が一昨日の夜のことです。
もう一人の級友と私は8年ぶり、彼とその級友とは20年ぶり、そして私と彼は51年ぶり。
2か月がこれほど短く感じたことはありませんでした。
午前中のテニス終了後、シャワーを浴びてベッドで休息を十分に取り、愛車で午後2時40分頃自宅を出発。
午後4時半頃に現地近くに到着。近くのビルの駐車場に停めて、ゆっくり歩きまわりながら会食場所を確認。
それは銀座通りにありました。
集合の午後6時までは時間がたっぷりとあったので思い出のはしごをすることにしました。
銀座通りから下通アーケードに入り、上通方面へ周りの店舗を見渡しながらゆっくりと歩きます。
右手のケーキ&喫茶のSWISSは未だに健在。3年生の時に付き合いながら、手も握ってくれないという理由から振られた彼女のことが思い出されます。
下通を通過して上通アーケードへ入るとすぐ左手には、そのままの感じで大人びた2階の岡田コーヒー店がありました。
ここでも女性との待ち合わせでドキドキしたことを思い出しました。
そのまま進み、長崎書店と丸文書店が現在もあることに驚きました。
ネットが普及して書店がほとんど消滅している現在稀有な存在です。
両方の店舗に入りました。私が何時も行く福岡店と明白な違いがありました。
それは、目につくところに「熊本」に関する本が多く見受けられたことでした。
郷土愛と今後の熊本を何とかしようとの意気込みを感じました。
予備校時代に盛んに通った山水亭のラーメンは肉まんとお好み焼きに変わっていました。
そこから反転し、上通、下通を通りサンロードを出口まで行きそこから右折して会場へ。
アーケード街は若者とアジア系の外人がかなり見られ活気を感じました。
熊本市は、今後もいけるとの思いを強く持ちました。
8年ぶりの友人は既に来ていて、面影は変わりませんが銀髪が更に濃くなった感がありました。
数分後彼が到着。びしっとスーツを着こなし流石と思いながら、かなり髪の毛が後退していて、街中で偶然会っても分からないくらい。
アッという間の2時間が過ぎて、次はどうしようというときに私が車で来ていることを二人が知ると、帰ろうかという話になりました。
私は、「心配せんでもよかよ。車の運転は好きだし、お酒は飲まんから次行こうよ」
彼の行きつけのバーへ行くことになりました。
そこでまたまた2時間以上が経ちました。
彼に、あまた付き合ったどの女性と結婚したか尋ねると、ちゃっかりお見合いで全然違うタイプの清楚な女性と結婚していて、呆れたと級友と二人で笑いあいました。
彼は国家公務員でもう一人の方は地方公務員、どちらも退職前の役職は上級職でした。
そのせいか現在も二人共に別団体で要職についています。
私からみてこの二人が最も公務員に向かないと疑問を呈したら、ほぼ同時に「就職難で行くところが無くて親のコネ」と。
いくらコネで入所したからといっても、実力がないとその地位には到達できません。
素晴らしいと感じました。
ただ公平な日本社会と思っていた私は、まだまだウブだということを思い知らされました。
二人から「今日は有難う。楽しかった」と何度もお礼を言われ、3人のグループラインを作り散会。
サザンオールスターズの曲をかけながら、トラックは多いものの空いている九州縦貫道を気持ちよく走り終えました。帰り着いたのが午前零時20分。
10年ぶりくらいの午前様となりました。