信用の重み

 先日、午前10時に取引銀行の支店長が、年末の挨拶に来られました。

優良顧客にのみ配られるいう、頭取の挨拶状と共に有名芸術家の作品集の高級カレンダーを三部持ってこられました。

弊社グループ3社分です。

その前日には、お歳暮に私の好きなハムがその支店から届いたばかりでした。

家族4人でお迎えし、金融業界や不動産業界の近況を聞きました。

 帰られた後に息子達に言いました。

『信用が一番大切。小さな嘘は絶対に付くな』

たかがバイク屋でも、小さな信用を長年積み重ねていけば、厚遇を受けることができます。

取引銀行がどれだけ自社を大切にしてくれているかの判別は、私の場合は(金利が安い)、(支店長が自ら出向く)、(銀行からのお中元・お歳暮がある)、(銀行系のプラチナカードの年会費を負担してくれる)(各種セミナーの案内がある)etc.

 反対の立場になればすぐに理解できます。

銀行は、必ず返済してくれる人や法人へ融資するのが重要なのです。

我々グループは、先ずはGIVEを行っている証拠です。

自分の利益だけを考えて、次々に取引銀行を増やしていくのは、経営が理解できていない証拠だと思っています。

中小企業は、(地銀2行+日本政策金融公庫)くらいがベターだと思います。

 その日の午後から、天神へ地下鉄に乗って出かけました。

証券会社から招待状が届いていたのです。

十四代今泉今右衛門の作品集の展示販売会でした。

最近では、デパートの外商だけでなく、証券会社でもこの様な催しもあるのだと驚きました。

 今泉今右衛門家は江戸期は鍋島藩の御用赤絵師として、明治以降は色鍋島の品格・格調を意識しながら色絵磁器を作ってこられたそうです。

十四代は2014年に人間国宝に認定され現在に至る、私より7歳年下の人物。

50種の新作が展示されていましたが、その中の二つに興味が湧きました。

一つは「色絵雪花薄墨墨はじき稲穂四季花文花瓶」もう一つは「色絵墨色墨はじき草花文象香炉」。

何度も何度も見入って、今までの磁気陶器と違った感じを持ちました。

あまりに熱心に凝視したのが分かったのか、窯元の営業の若い方が詳細に説明に来てくれました。

 私は芸術等の鑑識眼はほとんどありません。

ただ、その時の縁とストーリーと勘だけで購入を決めます。

有田には親しいバイク屋の社長さんご夫婦がいらっしゃって、過去に酒井田柿右衛門の花瓶とか夫婦茶碗を頂きました。

私はいくら高額でも、飾るのではなく大切に長く使用するタイプです。

その頃から、絵画だけではなく作陶ものにも関心が向いたのです。

 使用するとなるとやはり、上記後者の香炉です。

白地に華やかな草花をあしらった「ゾウ(動物)」の香炉なのです。

ゾウは縁起ものなのです。

「知恵・学問の象徴」「富と繁栄の象徴」「魔除け・守護の意味」

若い担当者がわざわざガラスケースから取り出してくれて、使用方法まで説明してくれました。

 小さく書かれた価格を見ると253万円。

流石に即決とはいきません。

担当者に名刺をもらい、「運と縁とタイミングがあれば、窯に買いに行きます」と伝えました。

すると「1点ものなので在庫は保証できません」との返事。

「そこが縁なのです」と私も返しました。

 以前に既述した、終の私の事務所が完成したら購入しようと思いました。

現在福岡簡易裁判所跡に建設中の、九州で一番高額な高層マンションの上階か、私の理想を具現化した一戸建てにするか、それともただの大法螺で終わるのか。

 帰ろうとすると、証券会社の二人の人物が、十四代今泉今右衛門の高級カレンダーと高級お菓子を下さいました。

どうも私を過大評価しておられる風が感じられます。

それでも単純な私は、嬉しそうにその紙袋を貰い、彼等よりもより深く長く頭を下げてお礼を申し上げました。

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