単純の強さ
数か月前に、東京在住の同業者の社長から、「今年76歳になる矢沢永吉のコンサートに興味ありますか?」との電話が突然ありました。
私は行ったこともなかったし、同世代のミュージシャンが引退する中での彼のパフォーマンスに興味を持ったので「行きたい」と即答しました。
「福岡公演が取れるかどうかわかりませんが、奥様の分も申し込みます」との返事を受けました。
その旨を真ダムに話すと嬉しそうに「私、矢沢のコンサートに行ったことがある」と。
私は「えっ?・・・」と思いながらも、直ぐに気を使い話題を変えてあげました。
今月に入って我々夫婦と彼の3人分のチケットが取れたと連絡が入りました。
このチケットが電子チケットで、我々のスマホにアプリを入れて、PWや顔認証を経て配分されるという、初めての経験でした。
息子達の嫁に操作をしてもらいながら、何とかチケットはスマホにゲットできました。
11月9日(日)の東京ドームでのコンサートも見に行っていた彼が、セットリストや主だった曲をUSBに入れて、何とYAZAWAと書かれた、大きめと中くらいの大きさのタオルそれぞれと、黒いTシャツ2枚も同時に送ってくれました。
それからというもの、私の車のマイクロSDカードにそれらの楽曲を長男に入れてもらい、運転の度に聞きました。
ユウチュウブを何度も見て、どのようなライブスタイルかも大体理解できました。
2025年11月23日(日)13時到着のJAL315便で彼が来るので、飛行場まで迎えに行きました。
すると、到着ロビーの一区画がロープで仕切られており、およそ100人くらいの若者がうちわ等を持って並んでいるのです。
ガードマンが数人配置されていて、黒ずくめの服を着て、大きめの帽子とサングラスを目深につけた女性がゲートを出ると、一斉に黄色い声。
あとで浜崎あゆみとわかりました。小さな体とオーラも感じない背中が印象的でした。
サンパレスでのコンサートに来ていたようです。
小柳寿司で昼食をとると、面白いものです、そこの二組のカップルが、大相撲の千秋楽と矢沢永吉のコンサートを見るための人々だったのです。
彼をホテルに送りチェックイン後、マリンメッセA館へ。
結局顔認証は出来ずに、PWと生年月日をスマホに入力してQRコードをかざして入場できました。
午後5時~午後7時までの2時間のライブでした。
先ず驚いたのが、白い上下スーツと白いハットをかぶった矢沢もどきの人物が数十人もいるのです。
彼等を中心に会場のあちらこちらから、「エイちゃ~ん」コールとウェーブが開演前から頻繁に起きていました。
そのほとんどが年齢のいった男性で、隣の女性陣も昔はそこそこの悪だった雰囲気を醸し出していました。
ソロデビューから50周年という記念コンサートでした。
最初の曲が「レイニーウェイ」で最後が新作の「真実」までの19曲、アンコールはお決まりの「止まらないHa-Ha」と「トラベリングバス」の2曲。
私が好きになった曲は、「もう一人の俺」「古いラブレター」「A DAY」「真実」
今までの各種コンサートでは、ほとんど立つことのない私でさえ、Tシャツを着て、立ってタオルを投げ上げ、「えいちゃ~ん」と叫びました。
このチケットを取ってくれた彼は、15歳にしてキャロルの時代からのファンだそうです。
穏やかで紳士的な彼と、矢沢永吉がどうも不似合いと感じながらも、ドラムとベースの強烈な音とビートに、若さを取り戻した感があります。
終演後、帰るペア達の後ろ姿が妙に幸せそうに感じました。
勝手な先入観かもしれませんが、優秀な学校を出て優良な企業に勤めた夫婦同氏が、一緒に旅行などいけないという話を聞くにつけ、考え過ぎは何事も良くない、単純な強さを改めて感じました。
うまかもん亭のステーキを御馳走してホテルまで送り散会。
帰宅後午後10時過ぎから読み出した本が、柴田翔の「されど われらが日々ー」。
人生・恋愛・結婚・死等の単純な考え方の対極の考え方の文学です。
学生時代に、厭世的になり、大人になる怖さ等を感じながら読んだ本でした。
何故、この様な本を再度購入したかもわかりませんし、強烈な単純さを味わったその日に読み始めたのか、運命の巡り合わせを感じた一日でした。
