男としての矜持(きょうじ)

 長崎店の店長は、ただでさえ大変な新規店舗で、単身赴任で頑張ってくれています。

小倉店や熊本店へも不平ひとつ言わずに赴任してくれました。

有難い存在だと常に感じており、私なりに気にかけています。

 先日彼に、好きなものを御馳走するので、自分の好みで店を予約するようにお願いしました。

その店は思案橋から丸山町に少し入ったところにありました。

先ず、新鮮な刺身が出てきて、それから赤かぶの煮つけ、鮨と出てくる品がどれも美味しくて驚きました。

店主の奥様に聞くと、今年で創業50年になるとのこと。

店の古さは少し気になりますが、常連客で何時も賑わっているようです。

 飲食業は、開業して1年以内に約3割、2年以内に半数以上が閉店すると言われています。

中小企業白書のデータによると、飲食業の都道府県別の廃業率は、長崎県が最も高く、次いで青森県、福岡県と続くそうです。

その長崎県で50年も営業しているのですから、大したものです。

我々が最後の客だったのですが、おかみさんが帰り際に、その日お客様に貰ったというまんじゅうを8個もくれました。

このほんのちょっとした心遣いは、我々も学ぶべきです。

 翌日午前10時頃、長崎からの帰り道で、私の携帯に電話がかかりました。

飲食業を営んでいる私の知人からのものでした。

内容は、「かんころもちとまんじゅうを作ったので家まで取りに来て欲しい」とのこと。

正午過ぎに彼の家に着きました。

 数年前に一戸建てを購入しており、3台分の駐車場が玄関横にありました。

奥様が出てきて、大層驚きました。

彼とは38年間の付き合いで、離婚後アジア系外国人の女性と再婚したことは聞いていました。

その奥様の若いことと美しすぎること。

年の差は何と23歳だそうです。

 料理人らしく、ちゃっちゃと昼食をこしらえてくれ、アップルパイまで焼いてくれました。

彼とは気の置けない間柄なので、失礼とは思いながら彼女に質問しました。

片言の日本語で、答えてくれました。

私:「君ほどの美しさならいろんな人が求婚したでしょう。何歳で彼と一緒になったの」

彼女:「23歳で結婚しました。何人からも求婚され、一番思い出深いのはアタッシュケースに万札を詰め込んでそれを見せ求婚されたこと」

私:「何故彼を選んだの?」

彼女:「私も若かった。けれどお金より好きな人がいいと強く思った」

 ここまでなら、そんなこともあるのかで終わります。

しかし、彼の行動に強く感銘を受けました。

離婚した元奥さんに、中央区の100坪の一軒家も当時2000万円ほどしていたメルセデス460SLも、ほとんどの財産を譲ってきたというのです。

ゼロからの出発で、新婚当初は1ルームの賃貸にシングルベッドに二人で寝ていたとのこと。

彼が47歳の時です。

事実は小説よりも奇なりどころか、漫画でも書けそうもないほどの衝撃を受けました。

 現在では、自分用のハリアーと奥様用の国産車の2台を所有。

お子様も二人いて、奥様は始終笑顔で「幸せ」を連発していました。

福岡市の中州で、40年間もシンプルなメニューで店が繁盛している理由が分かった気がしました。

 

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