逆境は成長の肥し
2025年5月10日(土)21:43 読了。
「日本人の心理」南 博 著
携帯に便利な親書を購入していなかったので、蔵書の中の1冊を地下鉄・バスの中と病院の待合室で読み返しました。
この本の裏表紙には読了日時が書かれていませんでした。
第1刷 発行が1953年11月20日で、1981年11月10日の第35刷 発行で終わっていました。
岩波新書(青版)定価380円。
恐らく1981年か1982年に読んだのでしょう。
セピア色したページのところどころに赤線が引かれていました。
大抵の引用が漢文だったりして、少々難解ではありました。
入社3年~4年で、長男が生まれた頃です。
何故このような本を手に取ったのか記憶にありません。
神戸本社から東京へ転勤となり、圧倒的な経済格差を体験しました。
そのうえに、社会に出てから不条理や不合理な経験を重ねて、くそ真面目で純粋だった性格に少々異常を感じ始めたのかもしれません。
赤線部分の一部を選出しました。
1.不幸な境遇について一番手っ取り早い「悟り」は、何も言わずに我慢していることである。時の支配者がこの我慢あるいは忍従を最高の美徳として、下の者達に説教してきた。軍隊教育はその一例である。
2.自分が不幸だと思うときは、もっと不幸な他人の事を考えて、慰めにする比較法を、貝原益軒は大切な「心術」の一つとしてすすめている。
3.不足あるいは、完全の欠乏について、心理的な免疫をつくっておけば、この変転極まりない人生で、非常な場合に、気落ちしたり、絶望したりしないですむからである。この「不足主義」の最初の提唱者は吉田兼好。
4.感情は、それを内におさえればおさえるほど純粋になり、強くなるというのが、日本的な感情説であり、それは感情の自由な表現によって、その純粋さ、強さを鍛えようとする、ルネサンス以降の西洋とは、全く反対の立場にある。一種の日本的マゾヒズム。
5.これらの思考に対抗するように昭和28年刊の「これからの上手な生き方」の一部分 人間は、働くために生きているのではありません。立派な仕事をしたい、成功したい、いい生活をしたい、楽しく暮らしたい、幸福でありたいために、成功するために、即ち自分を満足させるために、働きもし遊ぶのです。
この部分には2回ほど赤線が引かれていました。
徳川幕府の封建的な体制を維持するためと、明治以降の天皇に対する滅私奉公が都合よく軍部に利用されて、その名残が現在も生きているとの結論でした。
「大義名分だの、不義はご法度だの、義理人情というニセの着物を脱ぐことが、人間の復活の第一条件」との坂口安吾の言葉にも強く赤線が引かれていました。
世間知らずの田舎者が社会人となり、25歳で結婚し、東京という大都会に住むこととなり、26歳で第一子を授かったわけです。
当時の環境の激変は想像に難くありません。
相当悩んでいたのでしょう。
その数年後に会社を辞め起業することになるわけですが、起業後も不合理・不条理・裏切り・騙され等、それこそ世間一般のほとんど全ての罪悪を経験しました。
その都度都度に苦悩を抱えていたのでしょうが、振り返れば対策上一番効果があったのは、兎に角動きまわることでした。
これらの逆境が今の私を形成しています。
有難いことに、今では充実した日々が送れているし、昔よりは相当人に優しくなっています。
