共通点

 2024年5月20日(月)18時01分に、「山林王 田中敦夫 著」を読了しました。

全体的に詳細な資料本みたいであまり面白くもなく、読了に時間がかかってしまいました。

 明治期に三井財閥と双璧をなすほどの資産家である、土倉家の土倉庄三郎の評伝です。

彼は吉野林業と日本林業の先覚者といわれていますが、行った数々の業績の割には林業以外は常にサポート側に回ったため、あまり有名ではなかったようです。

読み進めると、常に国家と人々のためにお金を使っていたことが伺えます。

 自由民権運動の大家への寄付や、同志社大学、日本女子大学創設への多額の寄付等は一部です。

特に教育にきわめて熱心で、早くから女性教育にも力を入れています。

 面白かったのが、これほど教育熱心だったのに、彼が60歳の時にその教育を受けた長男鶴松に家督を譲り、全てを任せてから一気に土倉家が衰退するのです。

この鶴松は愚鈍というよりもかなりの人格者であったのに、彼1代で潰してしまうのです。

現在の価格で100億円を訳の分からない人物との協業で失くしてしまうのです。

その時に父である庄三郎が詠んだ句が『国のため人のためとは思えどもなす事々に誤りしかな』

原因は、周りにちやほやされて、人を見る目に難があったことと、怪しげな人物の持ち込む話にすぐに飛びつき、常に何かを成し遂げようと夢想することであったようです。

 この本を読みすぐに連想した人物が二人います。

一人は大王製紙の元会長の井川意高氏で、彼は米国でのギャンブルで100億円を失ってしまいます。

彼も井川高雄社長の長男で、東京大学出なので愚鈍ではありません。

 次に思い出したのが、以前に既述した知人です。

彼も長男というか一人っ子で、慶応大学出で愚鈍ではありません。

今でいうところの超富裕層でした。

ところが周りの怪しげな人物等に騙され、自己破産をしてしまうのです。

 教育という基礎は大切ですが、それ以上に早い段階で修羅場をくぐらせ、人物評価が適切にできる目を養わせることと、「信頼はするが信用はせず」の深謀遠慮を理解させることの方がより重要だと思いました。

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