割り切り
会社経営で何が大変かというと、大抵は他人の雇用という事になります。
我々のような小さなポテンシャルの業界でも、人を一人雇っただけに経営者のストレスが大きくなり、結局家族だけで経営する「店」の域を抜け出せない会社は多くあります。
特に人情派の経営者は、「自分がこれほどしてやっているのに・・」と感じがちです。
お人好しでなければ、優しい経営者でもよいと思います。
というのも、会社を倒産させる経営者の7割が「お人好し」というデータがあるからです。
人を使用する場合は、絶対に忘れてはならない基礎があります。
それは、人は『自分にとって利益になるかどうかで行動する』という大原則です。
特に日本では、この様な事を正面からいうと、そんなはずはない、「仕事が楽しいから」「経営者に憧れていたから」「世の中のためになりたいから」・・・等、他のこともモチベーションになっているというのです。
これは単に給料が高い方が良いという事ではありません。自分がより成長できるとか、他人から今以上によく見られたいとかでも構いません。
つまり、自分にとってのメリットの強弱で人は動くという事です。
この点を経営者は割り切らなければ、多くの人を使う事は出来ないと感じています。
ド素人の私がこの業界に入ってきて、ほとんどの人が出来なかった多店舗展開が出来たのは、ひとえにこの発想があったからです。
私も最初からこの発想があったわけではありません。自分が出来ない仕事を私に代わってやってもらうには何が必要かを常に考え続けた結果です。
辞めていく人には必ず理由を聞きました。全てが本音を言う訳ではありませんが、少しでも働く環境を改善しようとしたのです。
そのような事を積み重ねていくと、辞めていく人に対して、特別な感情は湧き上がらなくなりました。
何をどう変えたらより良い環境になるのかという、次の視点に向かっていけたのです。
そういった理由で私は送別会等にも出席しませんでした。
このような態度から、私は冷たい人間と酷評されているようです。
この個人の基礎的行動原理を理解したうえで、個人の利益を得るには先ず組織の利益を得ることが前提となることを全員に認知してもらう事が重要となります。
他人にこのことをしっかりと認知してもらうには、経営トップの人格が大きく左右します。
その人格の中での一丁目一番が『嘘をつかない』ということです。
小さな嘘でも一旦知れると、上に立つ人ほど下の者は信用しなくなります。
こうなったら何百回良いことを言っても、面従腹背となって組織は次第に弱くなるのです。
単に社長だけでなく、店長やマネージャでも同様です
更に割り切りという点で誤解がまん延していることがあます。
それは、チームプレイという認識においてです。
この概念はどちらかというと、弱いものを全員で助けるという風になりがちです。
この考え方は、アマチュアであれば問題ありませんが、社会人というプロになったら通用しないというのが私の考えです。
個々が強くなければ、チーム全体は強くなるはずもないのです。
それを強く意識するためにも、経営者やリーダーは結果に拘るという割り切りが必要となります。
この『割り切り』と『嘘をつかない』という二つのことを徹底するだけで、他人の雇用は難しいものとはならないはずです。