改めて経営者になるには
新聞の下欄に小さく福岡市の倒産情報が掲載されていました。
福岡市東区の輸出に特化した鉄スクラップ卸業者である「株式会社 守田」がそうです。
東京商工リサーチによると、2020年8月期の売上高は約43億円。それが2021年になると約200億円に急伸。
そして今年7月12日に破産申請手続きを行い、負債総額は約30億円。
あまりに急激な成長内容からは、倒産理由を推し量るにはかなり無理があります。
それでも私が感じたことは、改めて経営者は数字に強くなければならないという事でした。
以前このブログでも記述しましたが、弊社は創業から5年後くらいに一気に資金ショートをして倒産間近になったことがあります。
業績としては、売上高がどんどん伸長していて利益も出ていたので有頂天になっていました。
売上高が確か12000万円を超えた頃でしょうか、2000万円ほど資金が足りなくなっていたのです。
それまでは、銀行との関係もほとんどなく、運転資金の借り入れなど考えたこともありませんでした。
資金不足の主な原因は「在庫過多」に尽きます。
ここから、PLだけでなくBSの勉強が始まるのです。
経営の指南書には、必ずと言っていいほど「数字に強くなければだめだ」と書かれています。
先ず、PL、BS、CFをしっかりと理解し、少なくとも月次決算は必須です。
でもこれだけでは、現実的ではありません。
現場サイドでは、一日の現金集計で「1円」違ってもそれの原因を突き止める習慣が必要となります。
意外にこの小さなことを疎かにして、試算表だけチェックする経営者がいます。
私は、電話代から交通費等まで、現場の資金の流れを細かにチェックしていました。
ある時、数か月間にわたり電話代が高騰したのに気づき、NTTに照会すると、午後10時~12時にわたってスタッフが県外にかけていることが判明。当然こちらは相手先もわかっています。スタッフの彼女でした。
それを知ったうえでスタッフに優しく問いかけました。「夜遅く誰にどんな用件でかけていたのか?」
すると彼は「バイクの整備で残業をしていて、自分の出身県のバイク屋に教えてもらっていた」と。
暫くして彼は自ら退職しました。
二代目、三代目の経営者にこの細かな数字に関するセンスはありません。何故なら、ハンコ一つで銀行がお金を貸してくれるからです。
自らが倹約を旨として生活をしていないと、会社の細かい数字の意味もわかりません。
銀行は『成長しそうな会社に融資するのではなく、返済が出来る会社に融資をする』のです。
銀行に信用されるためには、財務の健全性が一番重要となります。ここでまた、数字の理解力が必要となります。
この数字に対する意識を徹底的に強化したうえで、次に経営者が考えることは、「売上を上げて利益を伸ばす」ことです。
当然、自分一人で寝ずに考えることも必要ですが、それだけでは無理なのです。そこに、現場の知恵と活力がプラスして初めて成就できます。
その為にはどうするか。簡単です。店長との会議だけでなく、スタッフ全員と常に意見交換し議論することです。
そのことを意識しながら進めていくと、結局行きつくところは「この会社をどうするのか」というビジョンというか夢が必要になります。
そこから、そのような会社にするための「社是」「経営理念」「行動規範」が生まれてきます。
遠回りで面倒くさいようですが、これらのことを考えられなければ、他人を雇って経営を行うべきではありません。