両親への思い

 先日、通院帰りに父母が新居に立ち寄りました。

「わあ、白くて立派な家ね。天井は高いし部屋が暖かい」

 ダイニングで熱いお茶を飲みながら、今年92と90になる二人が共に「今が一番幸せ」と笑顔で話してくれることが、私の何よりの慰みでもあります。

ただ、その次にくる言葉はいつも同じもの。

「あんたには、何も買ってあげれんかった。ごめんね。」

尋常小学校しか出ていない二人です。父は刻苦勉励し国家公務員になりました。

彼らの夢は、私と弟を大学まで出してやること。

 それこそ、爪に火をともしながら貯金していたのです。

そのような環境下でも、私は一度も貧しいと思ったことはありませんでした。

 今でも覚えているのは、父が毎週県立図書館に自転車で通い、私に本を借りてきてくれたことです。

更に私が勉強に目覚めたころには、8巻もある高価な百科事典、それにクラシック全集10巻まで買い与えてくれたのです。

 今、新居の自室で、このクラシック全集のレコードを50年ぶりに聞いています。

改めて両親の愛情の深さに感謝するばかりです。

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